【省エネと節電は違う】企業が省エネに取り組む上で最初にすべき意外なこととは?

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【動画】省エネと節電は違う|企業が省エネに取り組む上で最初にすべきこととは?

要約

省エネの基本は「効率化」:省エネは、単なる電力消費の削減(節電)とは異なり、エネルギー効率を高めることが目的。LEDやヒートポンプなどの技術を活用すれば、従来よりも少ない消費エネルギーで同じ便益を享受可能。特に建物の躯体性能向上や省エネ型設備の導入が重要で、利用者に特別な技術を要求しない点がポイント。

「見える化」と柔軟な電力管理の必要性:省エネ実現には、電力使用状況の「見える化」が不可欠。現在の使用量を把握し、削減ポイントを特定することで、無駄を排除できる。加えて、蓄電池やVPP(仮想発電所)などの技術を活用し、昼間の余剰電力を夜間に活用するなど、柔軟な電力管理が求められます。

企業競争力と省エネの関係:電力料金の高騰により、省エネの取り組みは企業の競争力に直結。ピークシフトや創エネ(太陽光発電)の活用、スイッチングなどを駆使し、製造コストの削減を図ることが求められます。まずは、自社で「今すぐできること」を見直し、小さな改善から始めることが重要。

出演者紹介

狩野晶彦
株式会社エネリード 代表取締役

狩野晶彦

電設資材卸会社勤務20年・家電業界専門誌リックの元専任講師・パナソニック客員講師。「ネット・ゼロ・エネルギーハウスとは」「知らないと損する電気料金セミナー」など、電力会社・大手企業・特約代理店等に向けて年間100 回以上の講演を行う。

恒石陣汰
株式会社恒電社

恒石陣汰

前職にて、イスラエル発のWEBマーケティングツール「SimilarWeb」「DynamicYield」のセールス・カスタマーサクセスを担当。その後、日本における再生可能エネルギーの普及と、電力業界に大きな可能性を感じ、2020年に恒電社に入社。現在は、経営企画室長兼マーケティング責任者として従事。YouTubeなどを通じた、電力・エネルギー業界のマクロ的な情報提供をはじめ、導入事例記事では、インタビュアー・記事の執筆も行なっている。

企業が省エネに取り組む上で最初にすべきこと

━━━今まで狩野さんと動画を撮らせていただく中で、太陽光を使った創エネ、つまりエネルギーを作る話や、電気料金がなぜ上がっているのかといったマクロ的な電力市場のお話を扱ってきました。

━━━ほかにも日常でよく耳にする言葉として「省エネ」がありますよね。これは非常に広く使われている言葉ですが、現在のように電気代が高騰している状況や、脱炭素を求められる世の中では、省エネというのは電力消費を減らすことを指します。その際、いろいろな手段が考えられると思いますが、実は「灯台下暗し」で、すぐにでも企業が取り組めることがあるのに気づいていない場合もあるかもしれません。

意外とこれ、多くの人が勘違いしている部分です。そして、原因はどこかというと、電力会社の啓発の仕方にも問題があるのかもしれません。

「電気を大切に」とか「電気が足りないから節電しよう」といった表現がよく使われますよね。ただ、「節電」と「省エネ」は意味が異なります。

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「節電」と「省エネ」

節電は、簡単に言えば「我慢」です。電気を使わないという行動そのものを指します。一方、省エネはエネルギーを効率よく使うことを指します。

━━━同じ明るさを維持するために使用する電力量を減らすことが、省エネですね。

その通りです。分かりやすく言うと、ここにある明かりの例です。

昔は裸電球で60W必要でした。60Wの明かりをつけるには60Wの消費電力が必要だったわけです。でも、今ではこれが7Wで同じ明るさを得られます。つまり、同じ時間使っても省エネになっているということです。

━━━工場で例えるなら、100個の製品を製造するのに、以前は電力を100使っていたものが、今では同じ生産量を維持しつつ、70の電力で製造できるようになるということですね。生産量を減らすわけではなく、効率化を図るわけですよね。

少し過激な話になるかもしれませんが、例えばガスでお湯を沸かす場合、「エコジョーズ」が人気です。これは、100のガスを使って97の熱効率を実現しています。

しかし、電気のヒートポンプを使うと、効率はなんと300%にもなります。つまり、100の電力を使って300%の熱エネルギーを得られるわけです。今では400%にまで効率が向上しており、省エネの観点で非常に優れた技術として評価されています。

━━━それがまず前提となる省エネの定義ですね。

はい。では、省エネを最も効果的に実現する方法は何かというと、建物を建てる段階で躯体(構造体)の性能を高めることです。

例えば、窓から熱を侵入させない・逃がさない工夫をすることで、少ないエネルギーで暖房効率や冷房効率を向上させる方法があります。生産効率を上げる取り組みも同じ考え方です。

━━━その点で言うと、個人ができる省エネと企業が取り組める省エネは、大きく変わらないのでしょうか?

あまり大きくは変わらないと思います。建物については、先ほど述べたように躯体性能を高めることが基本です。

次に、設備を省エネ型に変更することが重要です。例えば、明かりやエアコンなど、どのように使ってもエネルギー消費が少ない設備にすることが求められます。

使う人に特別なテクニックが必要ない、というのが基本的な前提です。

重要なのは、まず建物の性能を上げること。そして次に、製品や設備を省エネ型にすることです。例えばライトや空調機器などのユーティリティ設備が該当します。

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「電気の見える化」

━━━その際、デマンドコントローラーも関わってきますよね。

それを実現するには「電気の見える化」が必要です。

なぜ電気を見える化するのかというと、これはダイエットに似ています。まず体重計に乗り、現在の状況を把握します。そして、どの部分を減らすべきかを確認しますよね。同様に、エネルギー全体の使用状況を見なければ、合理的に削減するポイントを特定することはできません。

見える化によって、削減できる部分を効率よく減らし、設備を更新する際には必ず省エネ型に変更していくことが大切です。それでもエネルギー削減が十分でない場合には、太陽光発電のような発電設備を導入し、電気自体を自ら作り出す方法も選択肢になります。

━━━電気代が単純に上がっている、電気使用量が増えている、ということではなく、きちんと「見える化」をして、どこに問題があるのか、またそれが必要な電力なのかどうかを区別することが重要です。これを明確にしないと、省エネの実現は難しいと考えます。

企業によって状況は異なります。例えば、太陽光発電を導入しても、昼間に操業していない場合には効果が限定されます。

━━━つまり、太陽光発電が最も効果的に稼働する時間帯に、そもそも電気を使っていないと意味が薄れてしまう、ということですね。

その通りです。導入の意義が少なくなってしまいます。

━━━そのような状況下でも、電力の使い方に柔軟性を持たせることが省エネに繋がると思います。
例えば、蓄電池や電力を貯める技術を活用することで、省エネに結びつけることが可能ではないでしょうか。

確かに、省エネに関連する要素として、ピークシフトの考え方が重要です。以前は日中がピークでしたが、現在では夜間の電力需要が増えています。

ピークシフト
電力が多く使用される日中から、使用料が少ない夜間などにシフトさせて、使用電量を平準化させる方法

━━━電気の使用量が変化してきた、ということですね。

そうです。これは、24時間体制の経営スタイルが増えたことや、オール電化住宅の普及で夜間にお湯を沸かす人が増えたことが背景にあります。その結果、夜間の電力需要が高まる一方、昼間には太陽光発電による余剰電力が発生するようになっています。

そのため、昼間の余剰電力を有効活用するために、蓄電池や電気自動車といった技術を活用し、VPP(仮想発電所)の仕組みを導入することが、今後さらに必要になってくるでしょう。

━━━電力料金がこれほど上がってしまうと、企業の働き方や生産方法も、電力が安い時間帯を活用して生産し、それを価格に反映して販売することが重要になりますね。

おっしゃる通りです。電気が贅沢品のようになってきましたからね。

━━━贅沢を我慢するのではなく、同じサービスや便益を維持しつつ、エネルギー効率を高める方法を採用していくべきですよね。その方法としては、躯体を見直したり、省エネ機器を導入することが挙げられると。

まさしくその通りです。そもそも、自分たちがどの時間にどれくらい電気を使っているのかを「見える化」すること、そしてピークシフトを行うといった基本的な取り組みに加え、太陽光発電を活用して創エネを実現することが重要です。

例えば、発電した電気を自分たちで利用するだけでなく、昼間に作った電力を夜間に使えるよう蓄えておくなど、工夫が求められます。高価になってしまった電力をいかに効率よく、無駄なく使うかがポイントです。

━━━その点が、今後の企業間競争力や製造コストの差に直結してくる可能性がありますね。創エネの取り組みや電力料金を下げるためのスイッチングなど、さまざまな方法がありますが、まずは「灯台下暗し」で気づいていない、今すぐできることを見直すことが大切だと感じました。

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記事を書いた人

岩見啓明
株式会社恒電社

岩見啓明

クリエイター。恒電社では動画、記事、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告と幅広く施策を担当。個人では登録者数1万人超えのYouTubeチャンネルを運用した経験の他、SDGsの啓蒙活動で国連に表彰された経歴を持つ。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)、2025年に第二種電気工事士資格を取得。

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