【COP28】日本は再生可能エネルギーを2030年までに今の3倍に増やせるのか?
更新日:2023年11月29日
2023年11月30日から12月12日まで、ドバイのエキスポシティで開催されるCOP28は、気候変動に対する世界規模での対応の現状や、今後の方針を形成する上でも、大きな役割を果たす国際的な会議です。
パリ協定下において、国が決定する貢献(NDC)の更新や、進捗の評価が主要な議題となり、批准各国へ、気候変動に対応するための長期戦略や、実行可能な行動計画の策定が求められています。
COP(Conference of the Parties、締約国会議)
気候変動に関する国際的な取り組みを協議し、進展させるための重要なフォーラム。
1992年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択により設立され、締約国は毎年、地球温暖化とその影響に対処するための国際的な政策や行動計画を話し合う。特に、2015年のCOP21で採択されたパリ協定は、全ての国が温室効果ガス削減に取り組むことを義務付け、COPはその進捗を監視する場としても機能する。
また今回のCOP28は、世界の再生可能エネルギーを2030年までに3倍(2022年比)に増やすことを議長国が提言したことでも話題となっています。
日本における2022年時点の再生可能エネルギーの電源比率は「22.7%」。
その数字を、果たして2030年までに3倍に増やすことは現実的なのか?
この記事では、再生可能エネルギーの主たる電源である「太陽光発電」の普及において、日本が直面している課題を考察します。
目次
COP28で各国の“削減目標達成”状況の報告と評価が始まる
グローバル・ストックテイク(GST)
COP28で、大きなキーワードとなるのが「グローバル・ストックテイク(GST)」。
2015年のパリ協定のもと定められたGSTは、パリ協定の目的と、長期的な目標に向けた進捗を定期的に評価するためのメカニズムとして導入されました。
パリ協定に批准した各国が、2030年までの温室効果ガス削減目標の達成状況を2年ごとに報告し、5年ごとにその評価を受けることとなります。
GSTは、主に以下の三つの要素で構成されます。
- 情報収集と準備:UNFCCCや関連機関から提供される情報の収集、コンパイル、および統合。
- 技術的評価:収集された情報を基にした、パリ協定の目的と長期目標に向けた集団的進捗の評価。
- 成果の検討:技術的評価から得られた知見をもとに、各国がNDCの更新や、気候行動の強化をどのように進めるかを検討。
各国の気候変動対策の進捗状況を総合的に評価し、今後の行動計画の方向性を定めるために重要な機能を果たすグローバル・ストックテイク。遂に、COP28において初めて実施されます。
世界の再生可能エネルギーを(2022年比で)2030年までに3倍に増やすためには、導入が迅速に可能な太陽光発電の普及が不可欠といえます。
日本の太陽光発電の導入ペースは?
日本において、再生可能エネルギーの主たる電源である太陽光発電の導入状況はどうなっているのでしょうか。
上記のグラフを見て頂くと分かるとおり、世界全体で太陽光発電の年間導入量が6倍(2014年比)に増えている一方で、日本はそれほどのペースでは伸びていません。むしろ近年は導入ペースが鈍化しています。
2030年に温室効果ガス46%削減(2013年)を目標にしている日本。その達成には年間5GW(ギガワット)の新規導入が必要となりますが、直近3年間での合計新規導入は2.3GW程度に留まっています。
2010年には0.3%程度だった電源構成比率が遂に10%を超えた太陽光発電。それでもなお、世界と比較するとさらなる導入の加速は必至です。
太陽光発電の導入が伸び悩んでいる要因
FIT(固定価格買取制度)下での採算性低下
太陽光発電の導入ペースが鈍化している要因として、2012年に始まったFITの売電単価が年々下がっていることが挙げられます。
政府が売電単価を下げ、再生可能エネルギーの調達価格を抑えることで、市場における再エネ由来の電気の価格も下がり、競争力を高める狙いです。
需要家にとっては再エネ電源を使いやすくなる一方で、発電事業者にとっては、事業の採算性が低下し、投資に対するリターンも得にくくなります。
さらに出力抑制による発電量の減少、用地確保の問題に加え、自然災害やケーブルの盗難による設備トラブルも採算を圧迫しているといえます。
出力制御
出力制御は、電力の供給量を調整して、需要と一致させるためのプロセスです。電力は蓄えることができないので、供給が需要より多いと無駄になったり、電圧や周波数に問題が起きたりします。電力会社は、余る電力がある時や送電線の容量が限界に近づいた時に出力制御を行い、この制御は太陽光発電だけでなく火力発電や水力発電にも適用されます。
参考1:九州・中国管内で「出力制御」急増、太陽光発電事業者に”不安と動揺”(2023/07/20)
参考2:太陽光発電所の盗難被害が急増 外国人グループの犯行か(2023/10/16)
脱炭素の実現に向けて
大規模投資と自家消費の拡大が鍵
前述のとおり、FITの固定価格が下がったことで、投機目的で太陽光発電所を新設する投資家たちが減っている現在、私たちはどのように脱炭素化を進めていけば良いのでしょうか。
電力会社や大手企業、特約代理店等に向けて年間100 回以上の講演を行う株式会社エネリードの狩野晶彦氏はこう語ります。
今後は、大手電力会社が正しく投資して再生可能エネルギーの発電所を増やし、国がそれを支援する。個人や企業も自家消費型の再エネ導入を拡大し、省エネに取り組む。それらを両輪として、再生可能エネルギーの導入を進める必要があると思います。
いよいよ始まるCOP28から、各国が2030年までに温室効果ガス削減目標の達成状況を2年ごとに報告し、5年ごとに評価を受けることになります。
国際社会においては脱炭素へ取り組みに監視の見方が一層強まるなか、太陽光発電の導入ペースが鈍化している日本。
大手電力会社による投資だけでなく、個人や企業による自家消費型発電の拡大の重要性が顕在化しています。
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