法人向け|電気料金の内訳はどのような仕組みになっているのか?
更新日:2023年7月13日
初めて目を通すと、複雑にも思える電気料金の内訳。
しかし、電気料金がどのように計算され、それがビジネス運営のコストにどう影響を与えるのかを理解することは、事業の効率化と持続可能性に直結します。
そこで、この記事では法人向けの電気料金の内訳について詳しく解説を実施。基本料金・電力量料金・そして再エネ賦課金など、それぞれの項目が如何にして計算され、全体の電気料金に影響を与えるのか説明いたします。
電気料金の内訳を理解している企業とそうでない企業とでは、エネルギー効率とコスト管理の観点から、今後のビジネス運営に大きな違いが生じます。
我々の解説を参考に、ぜひ自社の電気料金明細と見比べていただき、より効率的なエネルギー利用とコスト削減に繋げて頂ければ幸いです。
電気料金の内訳
大前提として「電気料金」とは、私たちが日常生活やビジネス運営において電力を利用するために支払う費用のことを指します。
そして、そんな電気料金は「基本料金」「電気量料金」「燃料費調整額」「再エネ賦課金」の4つの要素から成り立っています。
基本料金
まず「基本料金」について、詳しく解説します。
基本料金は、電力供給のための基本設備(変電所や送電線など)の維持管理費用をカバーするための料金で、電気の使用量に関係なく毎月一定の金額が請求されます。
基本料金の計算方法は、一般家庭では契約アンペア数(契約電力)に基づいて設定されています。
契約アンペア数とは、電力会社と顧客が契約する際に定める電力の最大供給量のことを指します。契約アンペア数が大きいほど基本料金も高くなります。
一方、高圧電力の場合、基本料金は契約電力量(kW)に対する単価で計算されます。
契約電力量とは、使用電力に合わせた供給設備を電力会社が用意するための基準となる数値で、この契約電力量が大きいほど基本料金も高くなります。
契約電力の決定方法は「実量制」と「協議制」の二つが存在します。
実量制は契約電力が500kW未満の場合に適用され、協議制は契約電力が500kW以上の場合に適用されます。実量制の場合、契約電力は当月を含む過去1年間の各月の最大需要電力(デマンド)のうち最も大きい値となります。
つまり、契約電力を抑えるには、月次のピークや30分単位のピーク使用電力を制御する必要があります。
企業ごとに電気の使用場所や就業体制が異なるため、契約内容もそれぞれ異なります。しかし、基本料金の設定基準となるのは最大需要電力、つまり電力の最大使用量であることには変わりありません。
一方、協議制の場合、契約電力は顧客と電力会社との協議により決定されます。
基本料金は、電力供給の安定性を保つために必要な費用であり、電力供給の基盤となる設備の維持管理に直接関わる重要な部分です。そのため、基本料金を理解することは、電気料金全体を理解する上で非常に重要となります。
基本料金は電力使用量に関係なく一定であるため、エネルギーの効率的な使用や節電によって減らすことはできません。しかし、電力使用の状況を把握し、適切な契約電力を選ぶことで、基本料金を適正化することは可能です。これが電気料金の適正化に繋がります。
電力量料金
続いてご説明する「電力量料金」は、実際に使用した電力量(kWh)に応じて計算される料金です。
この料金は電力の使用量が多いほど増え、使用量が少ないほど減るという特性を持っています。
電力量料金は、私たちの電力使用行動に直接影響を受ける部分であり、エネルギーの節約行動によって直接的にコントロールすることが可能です。
計算方法は、一般的に使用した電力量に対する単価を掛けることで求められます。この単価は、電力会社によって設定され、地域や契約タイプ、さらには使用量の範囲によって異なる場合があります。
一部の電力会社では、使用量に応じて単価が変動する段階制の料金設定を行っています。これは、電力の使用量が一定の範囲を超えると単価が変わるという制度で、節電を促進するための仕組みとなっています。
また、電力量料金にはピーク時とオフピーク時の区別があり、時間帯別電力量料金という制度が存在します。
これは、電力の需要が高い時間帯(ピーク時)と低い時間帯(オフピーク時)で、電力量料金の単価を変えるもので、電力の需要と供給のバランスを取るための仕組みです。
ピーク時には電力需要が高まるため、電力供給を安定させるためにはより多くの電力を供給する必要があります。それに伴うコストが増加し、ピーク時の電力量料金の単価はオフピーク時に比べて高く設定されています。
電力量料金は電力の使用量に直結しているため、エネルギーの節約や効率的な使用がその金額に直接影響を及ぼします。そのため、電力量料金を抑えるためには、電力の使用量を適切に管理することが重要となります。
燃料費調整額
「燃料費調整額」は、電力会社が発電に使用する燃料の価格変動に対応するための料金です。
この調整額は、貿易統計における原油価格や液化天然ガス価格などから算出される、その時々の平均燃料価格により毎月変動します。
電力会社は、火力発電所で石炭、天然ガス、重油などの化石燃料を燃やして電気を生成します。これらの燃料価格は、国際市場の需給バランスや地政学的なリスクなどにより大きく変動します。
燃料の価格が上昇した場合、発電コストが増加し、結果として電気料金が上昇する可能性があります。一方で、燃料価格が下落した場合、発電コストが減少し、電気料金は下落します。
しかし、電気料金が頻繁に変動すると、消費者の生活やビジネスの経済活動に大きな影響を及ぼしかねません。そこで、電力会社は燃料費調整制度という仕組みを通じて、燃料価格の変動による電気料金の変動を緩和しています。
燃料費調整額は、燃料価格の変動に応じて毎月見直され、燃料価格が上昇した場合は電気料金に加算され、燃料価格が下落した場合は電気料金から差し引かれます。その計算方法は、基本的にはその月の平均燃料価格と基準燃料価格との差に基づいています。
基準燃料価格とは、電力会社が電気料金を設定する際に想定する燃料価格のことで、一定の期間ごとに見直しがなされます。
平均燃料価格が基準燃料価格を上回ると、燃料費調整額は増加します。逆に、平均燃料価格が基準燃料価格を下回ると、燃料費調整額は減少します。
再エネ賦課金
最後に「再生可能エネルギー発電促進賦課金」、通称「再エネ賦課金」についてです。
その名のとおり、再生可能エネルギーの発電を促進するための料金で、太陽光発電、水力発電、風力発電などの発電所の増設に使われます。
この制度は、2012年に始まった「固定価格買取制度(FIT)」が起源となっています。
FIT(固定価格買取制度)
環境用語集:https://www.kankyo-business.jp/dictionary/000193.php
太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を、国が定める価格で一定期間電気事業者が買い取ることを義務付ける制度。
東京電力:https://evdays.tepco.co.jp/entry/2022/01/06/000027
再生可能エネルギーを買い取った送配電事業者は、購入した電力を日本の電力卸市場(JEPX)で売り出しますが、この際の価格は固定買取価格よりもはるかに低いため、大きな損失が生じます。
その問題を解決するために、FITで電気を買い取る事業者には一定の補助金が支払われ、その補助金を支えているのが再エネ賦課金です。
再エネ賦課金の単価は、その年度に想定される買取費用の総額から、回避可能費用と事務費を差し引いた上で、想定される販売電力量で割って算定されます。単価は年度ごとに見直され、その年度の再生可能エネルギーの買取費用や回避可能費用、販売電力量の予測に基づいて決定されます。
回避可能費用とは、FITやFIPで買い取った電力量と同量を火力発電などで調達した場合に想定されるコストのことで、化石燃料の価格や電力市場の動向により変動します。
FIP(フィードインプレミアム制度)
経済産業省 資源エネルギー庁:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/fip.html
再エネ発電事業者が卸市場などで売電したとき、その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せする制度。
再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの普及と発展を支える重要な制度です。地球温暖化の防止やエネルギーの持続可能な供給に貢献するため、その普及と発展は社会全体の課題ともなっています。
まとめ
電気料金は、基本料金・電気量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金の4つから構成されています。
これら全てが電気料金の要素であり、最大需要電力や電力の使用量など、私たちの生活やビジネス活動に直結する要素が多く含まれています。
一方で、再エネ賦課金や燃料費調整額のように、エネルギー市場や政策など外部の要因によって変動する要素もまた、電気料金を変動させる大きな要因と呼べます。
利用状況や契約内容により料金が異なるため、自社の電気使用量や料金の構成を理解し、節電や電力使用の効率化に取り組むことは、ビジネス運営の観点からも重要となります。
今回の記事をより詳細に解説している動画もございますので、是非ご覧ください。
この記事を書いた人
クリエイティブ担当