【導入事例】サン電子工業株式会社が自家消費型太陽光発電を導入 |「環境対応こそが競合との差別化の鍵」業界変化に応じて事業の拡張を続ける企業の想いとは?

目次
要約
サン電子工業株式会社について:多角化で持続成長
1985年創業の同社はアミューズメント機器の電源・筐体を一貫製造しつつ、需要変動を補うためポップコーン機や介護・リハビリ機器、サービス付き高齢者住宅へと事業を拡大。3工場体制と「楽しさの提供」のノウハウを核に地域密着で収益源を多様化し、市場縮小期でも堅調な成長を維持している。
自家消費型太陽光発電を導入した理由:環境対応と経営自由度
広い屋根の好条件を活かし、長期契約に縛られるオンサイトPPAではなく自家消費型を選択。年間電力費を約40%削減しつつCO₂削減効果を数値で示して上場メーカーの調達要件に応え、競合との差別化と地域企業としての社会的責任を両立。設計から保守まで一括対応する恒電社の技術力と迅速なサポートが決め手となった。
今後の展望:新規事業など3つの柱
3~5年計画で①産業機器向け新プロジェクトを今秋始動し今期売上の1割規模へ②主力アミューズメント事業を一貫体制で高品質化③特許取得済みの自社ブランド製品を市場投入し収益を多角化。さらに社内勉強会で5~10年ビジョンを磨き、社員とともにスピード感ある挑戦で長期的な価値創造と地域貢献を目指す。
製造業(電子機器)|サン電子工業株式会社
埼玉県秩父市に本社を構え、アミューズメント機器の電源や筐体の製造を行うサン電子工業株式会社。
2025年5月に41期目のスタートを切った同社は、ゲーム機の製造のみならず、介護・リハビリ分野など多岐にわたる事業領域で挑戦を続けています。
本稿では、同社代表取締役社長 朝香和人様に、これまでの歩みと今後の展望、さらに今回、自家消費型太陽光発電を導入した背景や稼働後の手ごたえ、ご感想を伺いました。
「需要変動に左右されにくい、多角化ポートフォリオを形成する」

事業の原点と現在の柱
———まず、御社の事業内容について教えてください。
当社は40年前、私の父が秩父で創業しました。
当初は大手ゲームメーカー様が製造・販売するアミューズメント機器の「スイッチング電源(AC電源をDC電源に変換する機器)」の製造からスタートしました。その後、ゲーム機本体の組み立ても担うようになり、現在は電源・アンプ・制御基板から大型筐体完成品までワンストップで提供しています。
40年前というと、ゲームセンターの黎明期で、市場拡大と歩調を合わせる形で当社も成長してきました。現在では関東に拠点を置くほとんどのメーカー様とお取引がある状況です。




規制により、業界自体が縮小傾向にあった時期もありましたが、現在でも、売り上げの8割以上がアミューズメント筐体や基板類のご提供によるもので、その他にも産業向け機器のご提供や、自社製品の製造もおこなっています。
アミューズメント業界は季節の波が非常に大きく、ゴールデンウィーク、夏休み、冬休み、春休みなど、どうしても需要が偏ってしまう特性があります。私たちは、その需要の変化に対応するために3工場(秩父本社工場・太田工場・深谷工場)で対応していますが、閑散期は避けられません。
そこで、お客様のゲーム機をOEM/ODMで作ってきたノウハウを活かし、ゲームセンターとは違うアミューズメント機器を作っています。最近では、国民的アニメのIPを使用してポップコーン自販機を自社開発し、販売もしています。

———先ほど「業界自体が縮小傾向にあった」とお話にありました。市場が落ち込んだ背景や、この先どうなっていく見通しか、教えていただけますか?
2014年がゲームセンター業界の底でした。最大の要因は風俗営業法5号営業に起因する営業時間・年齢の制限です。
2016年の規制緩和を皮切りに、それ以降、年率102%~107%ずつ緩やかに市場は回復しましたが、2020年のコロナ禍で再び急落。現在(2025年度)はようやく2019年水準を上回るところまで戻った、というのが業界全体のコンセンサスです。
昨今では、いわゆる「キャッチャー」系筐体が非常に人気を博しており、ブームと呼べる状態にあると思います。しかし、それにも限度はあると考えており、市場規模の完全復活は難しいと見ています。
そこで当社は、筐体OEM/ODMの開発・設計・製造という主軸を磨きつつ、ゲームセンター外でも長く使える機器を自社開発し、需要変動に左右されにくい多角化ポートフォリオを形成することで、業界の変化に備えています。

「楽しさを提供するノウハウ」を活かして、社会に何か提供できないか
介護・福祉分野への多角化
———貴社は介護事業にも参入されていると伺いました。その内容について教えていただけますか?
埼玉県の長瀞(ながとろ)町に、サービス付き高齢者向け住宅 しあわせの森を運営しています。

事業内容としては、特別養護老人ホーム(要介護度が高い方を 24 時間ケアする施設)とは違って、比較的自立度が高い 60 歳以上の方を対象に、以下のような機能を提供しています。
- 見守り付きの住まい提供(全 33 室)
- デイサービス(日帰り介護・機能訓練)
- ケアサポート(ケアプラン作成)
- 訪問介護(在宅生活支援)
———参入の背景としては、先述の「事業多角化によるリスクヘッジ」があったのでしょうか?
確かにリスク分散の側面はあります。しかし最大の動機は、少子高齢化社会のなか、私たち強みを活かして、社会に何か提供できないかと考えたことです。
当社は、創業以来「ゲーム機を作るノウハウ」を培ってきました。これは言い換えるならば「楽しさを提供するノウハウ」です。そこで、九州大学病院リハビリテーション部さんとの共同で、ゲーム感覚で取り組めるリハビリサポートマシンを開発。「リハビリ=つらい」という従来のイメージを覆すマシンを目指しました。
このマシンを、実際に介護施設の入居者に試してもらったところ、運動機能と脳機能の活性化に効果が 見られ、メディアでも多数紹介されました。現在では全国で約 300カ所の施設に導入されています。

あとは当時、社内で初めて介護離職される方が出たことも、大きなきっかけでしたね。
遠くに住む親御さんの面倒を見るために「会社辞めて地元に帰ります」とか、同じ市内だとしても、親御さんの面倒見たいから「パートになりたい」と言われる社員さんが出てきた際に「だったら介護施設も作って、いざというときに社員さんの受け皿となれる場所を作りたい」と話が上がりました。
自分たちが介護・リハビリ機器を製造しながら「どういった部分が本当に困っているのか」、より当事者に寄り添って対応していく中で、やはり自分たちで施設を運営したいという想いで立ち上げたのが、このしあわせの森になります。
自家消費型太陽光発電システムを導入したきっかけ・理由
再生可能エネルギーと設備更新
———今回、自家消費型太陽光発電を導入した理由を教えていただけますか?
自家消費型太陽光発電システムの導入を検討し始めたのは、実は、複数のオンサイトPPA事業者さんが提案に来られたことがきっかけです。
深谷工場の屋根は広く、日照の条件も良い。なおかつ設置費用もかからないとなれば一見魅力的に思えます。しかしながら、10年以上にわたって屋根を貸与し、電力単価や契約条件を固定される。また、撤去時期も読めず、経営の自由度が大きく損なわれることは、次の世代に負債を残しかねないと判断しました。
一方、条件が良いことは分かったわけですから、自家消費型太陽光発電の導入には前向きになります。これが一つ目の理由です。

二点目としては、大手ゲームメーカー様、特に上場している企業からは「CO₂削減に積極的なサプライヤーを優先したい」「何か取り組めませんかね?」という要請が強まっていました。競合の数がピーク時の半分に縮小する中、環境対応こそが差別化の鍵になると確信しました。
そこで金融機関に相談し、信頼できるパートナーとして恒電社さんをご紹介いただきました。
———弊社にお問い合わせいただく企業様の多くは、高騰する「電気代の削減」を検討のきっかけとして挙げられます。貴社でもその課題はあったのでしょうか?
電力コストの抑制はもちろん大きなテーマです。ロシア・ウクライナの情勢が不安定となり、燃料価格が高騰し、企業はレジリエンスを高める必要に迫られました。
当社では、自家消費型太陽光の導入で年間電力コストを約40%削減できる試算ですので、経営の安定化という観点で大きなメリットがありますし、当然勘案もしています。
とはいえ、最重視したのは社会的責任です。当社は介護施設を含め地域に根差した事業を展開しており、利益だけを追っているわけではありません。CO₂削減という社会課題に、数値で効果を示して応える── これが導入を決断した最大の理由です。
———結果的に恒電社を選んでいただいた理由は、どういった点だったのでしょうか?
最大の理由は 「設計からメンテナンスまでワンストップで請け負っていただける安心感」 です。
発電設備は導入して終わりではなく、故障時にどれだけ迅速に対応してもらえるかが経営リスクを左右すると考えています。実際、今回新設した太陽光発電とは別に、過去に導入した既設のパワーコンディショナ(PCS)の更新工事もお願いしましたが、複雑な改修も、安全かつ確実にこなしていただきました。
私自身も複数回の打ち合わせに同席しましたが、こちらの細かな要望にも真摯に向き合ってくださる誠実な姿勢と技術力に信頼を深め、恒電社さんへの発注を決断しました。

———実際に施工が進んでいくなかで、率直に恒電社に対するご感想はいかがでしょうか?
ちょうど外壁塗装のタイミングとかぶったこともあり、バタバタしてる時期ではあったのですが、とても安心してお願いできたかなと思います。
あとで聞いたのですが、太陽光発電設備の配線も外壁と同じ色に塗ってもらったとのことで、非常に細やかな点まで気遣いをしていただき感謝しています。


先代が残してくれた「ヒト・モノ・カネ」という資産を礎に、組織全体で推進する
———最後に、朝香様ご自身が描く、今後の会社像をお聞かせください。
3~5年の中長期目標として、社内では大きく3つのテーマを掲げています。
1. 新規事業の立ち上げ
まず一つ目は、詳細はまだ公表できませんが、今秋から産業機器向けの新規プロジェクトを始動します。今期中に全社売上の約10%を占める規模まで育てる計画です。社内総出で推進し、早期の軌道乗せを目指します。
2. 主力事業(アミューズメント)の推進
二つ目のテーマとして掲げているのは、売上の8割以上を占めるアミューズメント分野を、これまで以上に安定的かつ高品質に提供することです。当社は開発から製造、品質保証、修理まで一貫体制を敷いており、全社一丸でさらなる付加価値を創出します。
3. 自社製品の開発強化
最後に、自社ブランド製品を積極的に創出します。今年度は特許出願を完了させ、数年後の市場投入を見据えた開発を進めます。開発部門を中心にチャレンジし、将来的な収益の柱へと育成します。
期末にはこれら3目標の進捗を振り返り、翌期計画へ反映します。目標自体は継続しつつ、状況に応じて内容をアップデートします。また、5年・10年先を見据えた長期ビジョンについては社内勉強会を立ち上げ、段階的に検討を深めます。
———社員さんも含めて、会社規模で取り組んでおられるのですね。
私一人でできることには限界があります。新体制となった今、一定の役職以上のメンバーと方針を共有し、組織全体で推進する体制づくりにも本年度は注力してまいります。
先代が残してくれた「ヒト・モノ・カネ」という資産を礎に、付加価値の高い製品へ挑戦し続けます。特に「ヒト」という面では、人脈もそうですが、何よりも社内の人材はかけがえない財産だと考えています。これからもスピード感を持って挑戦し、社員が誇れる会社をつくる——それが私の願いです。
今回、自社資産を活用して太陽光発電設備を導入し、その削減効果を自社で可視化しました。これにより長期的な経営の自由度を確保すると同時に、取引先にも胸を張れる環境対応を実現できたと考えています。
———この度はインタビューにご協力いただき、誠にありがとうございました。
インタビュー・執筆・写真
