【パートナーインタビュー】明治大学サッカー部監督 栗田大輔氏に聞く「たかがサッカー、されどサッカー」の真意とは?

ピッチ上だけでなく、ピッチ外での活動を通して、選手の人間力の向上・人格形成を追求することをポリシーとする明治大学体育会サッカー部

そのビジョン・ポリシーに共感した株式会社恒電社は、2021年3月1日より明治大学体育会サッカー部(一般社団法人明大サッカーマネジメント)とスポンサー契約を締結している。

当部は、サッカー日本代表長友佑都選手を初め、数多くのプロサッカー選手を輩出していることでも有名だ。

そして伝統的なポリシーを元に、関東大学サッカーリーグを4年間で3回優勝し、2019年には大学サッカーの全タイトルを制覇するなど、今や大学サッカーNo.1の強豪となった。

そんな強豪明治大学サッカー部で監督として指揮を取る栗田氏は、自身の特徴をこのように語る。

30年間大手ゼネコンでビジネスの経験をしながら、“並行”して大学サッカーの監督をやってきた。その上で“結果”もついてきたことが私の最大の特徴だと思います。」

本稿は、2015年に監督に就任後、2022年度までで11個のタイトルを獲得した栗田氏が「どのような考え方や哲学をもって勝ち続けるチーム作りをおこなっているのか?」について取材をした。

組織運営・人材育成・ビジョンの浸透などに悩んでいる企業経営者の方や管理職の方々にマネジメントの示唆に富む内容となっているのでぜひご覧いただきたい。

明治はプロの養成所ではなく、“人間形成の場”だ

━━━まずは自己紹介をよろしくお願いいたします。

明治大学サッカー部で監督をしております栗田大輔です。

2013年から明治大学サッカー部のコーチに就任して、2014年に助監督を経て、2015年から監督として指揮をとっております。

━━━本日はよろしくお願いいたします。さっそくですが、質問に移らせて頂きます。

はい、よろしくお願いいたします。

━━━入部する選手をセレクションする上で、技術面以外で重要視をしているポイントを教えてください。

大前提、スポーツ推薦でサッカー部に入るためには「全国大会に出場している」「日本代表に入っている」もしくは「国体で本戦に出場している」などの明治大学が定める基準をクリアしている必要があります。

おかげさまで2015年から現在に至るまで、明治大学サッカー部は11個のタイトルを獲得し、プロサッカー選手を70名ほど輩出してきました。

そうなると、最近の高校生からすると「明治大学に入るとプロになれる」と思ってるんです。

ですが明治大学サッカー部には「明治はプロの養成所ではなく、“人間形成の場”だ」というポリシーがあります。

練習生には練習に複数回来てもらい、その際に明治ってこういうところなんだよとか、明治ってこういうポリシーでやっているんだよと、練習生にさんざん話します。

それを何度か家に持ち帰ってもらい、明治のサッカー面・明治の考え方を踏まえた上で「それでも明治でやりたいんだ!」と思った選手のみが最終的に推薦を受けに来ます。

もちろんサッカーの技術も必要ですが「僕は高卒でプロに行けなかったので、明治でいいです」みたいに考えている選手は来なくて良いと思っています。

直接的に伝えませんが、選手を見る上でそのくらいの感覚で臨んでいます。

一般の学生が一生懸命勉強をして明治大学に入る中、彼らはサッカーだけで明治大学に入学しています。

もちろんサッカーにはサッカーの苦労があることは理解していますが、他の学生や先生の中でも「なんでサッカーだけをやってて入学できるの?」と思っている人もいるかもしれません。

なので選手には「あなたは明治大学サッカー部に入るんじゃないんですよ。“明治大学”に入るんだよ」と伝えています。

選手はそういったことを理解し納得できるパーソナリティを持っている必要があると思います。

例えば「僕はプロになりたいので明治大学に入る」というのであれば、極論「じゃあプロになれないなら明治大学に入らないの?」という話になりますので。

明治の部員になったからには、4年間、最後の教育期間でしっかり成長して「その後“社会”で活躍できるようになって欲しい」「自分の道を自分で切り拓いて活躍して欲しい」そういった想いがありますし、マネージャーに対しても同じ想いを持っています。

━━━技術面だけでなく、選手の人間性も重要視しているということですね。

当部では試合に出るとか出ないというのは、人間性の次の話として置かれています。

確かに、勝ち上がっていくために自己主張も大事ではありますが、ビジネス同様、選手は“誰か”のために価値を提供することで自分自身に還元されると思います。

結果的に、プロになった時に本当に活躍する人は、レベルが上がれば上がるほど自分のためだけでなく、周りの人にも感謝を持っていると思います。

例えば、テニスで世界ランキング1位のジョコビッチ。

ジョコビッチのスピーチをぜひ聞いてほしいです。

チームジョコビッチへのリスペクトと感謝、そして大会運営者への感謝。

トップになればなるほど“誰か”のためにプレイしていることが分かります。

ビジョンが組織全体に浸透していくプロセスとは

━━━部員達に明治のビジョンやポリシーを伝えていくために行っていることはありますか?

例えば、今週から新シーズンが始まりますが、シーズンスタート時には必ずミーティングをして、私の今年度の運営方針(ロードマップ)が4〜5枚ビッチリ書かれた資料を選手やスタッフと徹底的に読み合わせます。企業でいう経営方針と同じですね。

その資料には「変えてはいけないもの」と「あるべき姿」が書かれています。

サッカーのテクニックや戦術については一切書いていません。

そのように、“区切り”となるタイミングでビジョンやポリシーや考え方を全員と共有します。

それだけでなく、試合に出る11人も、それ以外のメンバーもそれぞれの立場・役割でポリシーを体現することを“日常”から徹底しています。

ですが、監督だけでなく選手同士がお互いに意識を高め合わないと意味がありません。

今は選手間で理想を追求しあう仕組みが出来上がっています。

それが明治スタイルの確立につながっているのではないかと思います。

選手達が“自発的”にお互いを高め合うためには

━━━日常から選手同士が“お互い”に高め合う環境を作るために、トップとして意識していることはありますでしょうか?

「基準」を明確にすることですね。

例えば僕の中で選手は全員平等です。

上手いからといって贔屓もしないですし、人によって怒る怒らないを変えることなどもありません。事象が全てで、事実に対してのみ褒めたり、怒ることはあります。

明治大学サッカー部は、良し悪しの行動基準が明確です。

だからこそ選手が腹落ちして、日々“自ら”正しい行動をとってくれているのだと思います。

それともう一つ、選手同士がお互いに高めあっていく環境を作るために大事なことはやっぱり、監督がチームを「勝たすこと」です。

選手が納得できるじゃないですか。「やっぱりこの人についていったら勝つ」と。

試合に勝ち続けることで明治大学に対するスカウトの注目度も高まり、Jリーグにいく選手も増えます。

そういった“結果”をもとに、先輩の4年生が3年生に伝え、3年生が2年生に伝え、2年生が1年生に、“自信を持って”ポリシーを伝えていけるわけです。

やる気満々で入った新入生が、日頃から文句ばかり言っていて勝てていない先輩達を見た時にどう思うか?もちろん魅力的じゃないし、やる気が一気に無くなりますよね。

これは企業にも当てはまると思います。

行動基準を明確にして、日頃から実直に取り組むこと。その上で、結果を残すこと。

この二つが大事だと思います。

もう一つ挙げるとすると、監督が“決断”をすること、そして結果に“責任”を取ることも大事だと思います。

スポーツでは勝った時は選手のおかげで、負けた時は監督のせいなんです。

世の中には判断や評論する人はたくさんいます。

ですが、いざ決断をして、それを実行して、責任まで取るリーダーは意外と少ないと思います。

企業でいうと業績が良くない時、経営者が「自分のせいだ」って意外と考えないというか、部下のせいにしてしまうケースもあると思います。

企業もリーダーが決断し、実行し、責任を取れば、もっと多くの人がついてくると思います。

ビジネス経験×サッカー部監督

━━━共通のポリシーを持ちながらも、選手の個性は毎年異なると思います。多様な個性を束ねながらも毎年勝ち続けていくために意識していることはありますか?

特に意識していることはありません。ですがシンプルな話だと思います。

チームの「目的が明確」であること、そしてチームの「行動指針」に沿って関係者全員が日々全力で取り組んでいけば、組織は自然とまとまります。

その前提のもと、サッカーが日々上手くなっている実感があったり、試合に勝ち続ける経験をすることで、自分達のチーム・行動に「誇り」が生まれてきます。

「誇り」と「自信」が生まれると、さらに日々一生懸命に取り組む。するとまた「結果」につながる。

目標があって、評価があって、報酬があって、というサイクルの中でビジネスだって動きますよね。

このサイクルがチームや組織を強くしていく上で重要だと考えています。

━━━ありがとうございます。栗田監督が現在の考え方に至った背景を教えてください。

元々サラリーマンをやっていた経験が影響を与えていると思います。

私自身、大手ゼネコンで30年ほど働き、部長職でマネジメントの立場も経験しました。

その時に「どうしたら多くの人を動かせるのか?」「どうしたら人を育てることができるのか?」「どうしたら役員の人々に納得して貰えるのか?」というようなことにずっと向き合ってきました。

その時に学んだ組織論や対局の動き方などが、今の指導方針にも繋がっていると思います。

最初に言った通り、明治大学サッカー部はプロの養成所ではなく、“人間形成の場”です。

「社会」で活躍できるような要素(マインド・本質)を4年間で伝えますが、そこから先に活躍できるかは本人次第です。

大学を卒業した後に、色々な人や企業と出会い、様々な経験をしていくでしょう。その時に、その経験や知識を受けられるベースとなる人間性がなければ、社会では活躍できないと考えています。

30年間のビジネスの経験をしながら、並行して大学サッカーの監督をやってきた、その上で結果もついてきたということが私の最大の特徴だと思います。

サラリーマンをやりながら、監督をやってる人も中にはいると思います。最初に言った通り結果を出すことで、説得力も上がりますし、選手への伝わり方も全然違いますよね。

今後さらに、サッカーの監督と企業で経験したことを上手くつなぎ合わせた指導方針を元に、もっと日本サッカー界のためにも貢献したいという思いがあります。

そのためには技術的に優れているだけではなく「人間的に良い人材」「サッカー界だけでなく“社会”で活躍できる人材」を日本サッカー界に輩出していくことが大事なことだと思いますし、それが大学サッカーの役割だとも考えています。

━━━最後に2023年シーズンの抱負を教えてください。

2023シーズンのチームスローガンは、

「紫名」(しめい)〜紫紺の伝統と共に、明治の明日を創りあげる〜

今年で創部102年目を迎えます。新合宿所に移転するなど変革期となるチャレンジの年に、これまでの先輩が築きあげた歴史と伝統を大切にしたうえで「新しい歴史と未来を自分達の手で創り出す」一人一人が高く同じ志をもって新たな明治を創りあげようという想いがこめられています。

「これまでの常識を覆すような圧倒的な明治の体現」を目指して取り組んで行きます。

本日はありがとうございました。

この記事を書いた人

恒石陣汰
株式会社恒電社

恒石陣汰

前職にて、イスラエル発のWEBマーケティングツール「SimilarWeb」「DynamicYield」のセールス・カスタマーサクセスを担当。その後、日本における再生可能エネルギーの普及と、電力業界に大きな可能性を感じ、2020年に恒電社に入社。現在は、経営企画室長兼マーケティング責任者として従事。YouTubeなどを通じた、電力・エネルギー業界のマクロ的な情報提供をはじめ、導入事例記事では、インタビュアー・記事の執筆も行なっている。

クリエイティブ担当

岩見啓明
株式会社恒電社

岩見啓明

クリエイター。恒電社では動画、記事、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告と幅広く施策を担当。個人では登録者数1万人超えのYouTubeチャンネルを運用した経験の他、SDGsの啓蒙活動で国連に表彰された経歴も。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)を取得。

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