屋根上太陽光発電設備の設置 | “形状が重要?”埼玉県の事例から分かる“向いていない”屋根とは?

屋根上太陽光発電設備の設置 | "形状が重要?"埼玉県の事例から分かる“向いていない”屋根とは?

2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、企業のCO2排出削減に対する取り組みが必須化していること、そして直近では円安・ウクライナ情勢などの影響により電気代が高騰していることから、その対策手段となる自家消費型太陽光発電のニーズが高まっています。

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導入にあたり、企業が太陽光パネルの設置を検討する主な場所としては、「社内の未利用地」「駐車場(ソーラーカーポート)」そして工場など施設の「屋根上」が挙げられます。

それぞれには特性と利点がありますが、製造業の企業が太陽光パネルを設置する際は「屋根上」に設置するケースが最も一般的です。

この記事では工場や施設の「屋根上」に太陽光パネルを設置する際に、最適な設置をするために考慮すべき点や、実際に設置がしやすい屋根の形状などについても解説をします。

法人のお客様が屋根上太陽光発電のご導入を検討される際に、参考にして頂ければ幸いです。

建物・屋根の「強度」

まず工場の屋根上に太陽光パネルを設置する際に考慮すべき点の一つ目は、建物・屋根の「強度」です。

特に古い建築物の場合は、耐震基準や構造的な問題から、屋根上に太陽光パネルを設置することが困難な場合もありますので、企業が太陽光発電システムを導入する際には、建物・屋根の「強度」の観点から太陽光パネルを設置しても問題がないかを確認することが重要となります。

新耐震基準が施行された1981年以降の建物や、基準がさらに厳格化された2000年以降に建築した建物は、太陽光パネル設置の適応度が比較的高いと考えられます。

構造・強度計算の結果、構造的な強度が十分でない場合は、設備の設置前に屋根の補強や構造強化が必要となる場合があります。

太陽光パネルの負荷

そもそも屋根上に太陽光発電設備を設置すると、どのような種類の負荷が生じるのか?を説明します。

  • 自重負荷:
    太陽光パネル、架台、配線等を含む設備全体の重量です。これらが屋根に対する直接的な負荷となります。一般的に太陽光パネル一枚(415Wの場合)の重さは約20Kgで、平米荷重でいうと11〜12Kg/㎡と言われています。
  • 風荷重:
    パネルが風にさらされると風荷重(かぜかじゅう)が発生します。風荷重とは、建築物の立面が受ける風圧力(N/m^2)のことで、速度圧と地域ごとに決められた風力係数を掛けたものとして表されます。パネルの向きや角度、形状、建物の高さや周囲の地形等により、風荷重は変動します。風荷重によってパネルを持ち上げる力(揚力)をが生じるため、構造体に対するせん断応力と曲げモーメントが発生します。
  • 積雪荷重:
    積雪による荷重も考慮する必要があります。特に雪が多い地域では、積雪が屋根にストレスを加える可能性があります。
  • 地震荷重:
    日本は地震多発地帯であるため、地震による加振力も考慮に入れる必要があります。地震荷重は横力として作用し、屋根構造に影響を与えます。

これらの負荷は一部分であり、設備の設置・運用にあたっては様々な要因が複雑に絡み合います。地域の気候条件、建物の設計、使用される材料の品質等、具体的な状況によって負荷は変化するため、太陽光発電設備の設置する際に、専門家への調査の依頼も検討する必要があります。

また、計算の結果、構造的な強度が十分でない場合は、太陽光パネルの設置前に屋根の補強が必要となります。

屋根の「形状」

太陽光パネルの設置を検討する企業にとって、屋根の「形状」も重要な要素の一つです。

屋根の形状・材質は太陽光パネル設置の可否だけでなく、その後の維持・メンテナンスの要件や寿命、さらには最初の設置コストにも影響を与えます。

実際に、設置しやすい屋根、しにくい屋根の形状にはどのようなものがあるのかを見ていきます。

太陽光パネルを“設置しにくい”屋根

  • 外断熱屋根:
    外断熱屋根は、高い断熱性能をもつ一方、その特性上、太陽光パネルの取り付けは困難と言われています。架台等が断熱材を貫通すると、断熱性が損なわれ、また断熱材自体が損傷する可能性もあります。また、パネルの重量により断熱材が圧縮されると、屋根の全体的な性能と寿命が短縮される恐れがあります。
  • 非歩行屋根:
    非歩行屋根は、その強度と設計が人の重量を支えることを想定していないため、パネルの取り付けやメンテナンスが困難です。
  • 耐火屋根:
    耐火屋根は、その特性上、太陽光パネルの取り付けが困難です。また設置後の耐火性能に影響を及ぼす可能性があります。架台を設置する際に、屋根材の耐火層を貫通する可能性があり、屋根全体の耐火性能が低下してしまう場合もあります。
  • 錆、腐食が激しい屋根:
    錆や腐食は、屋根材料の構造的な強度と寿命を大幅に低下させます。よって、太陽光パネルの安全な取り付けが難しいこと、そしてパネルの重量によって屋根が損傷したり倒壊する可能性があります。
  • 板金が薄い屋根(トタン等):
    薄い板金製の屋根は、太陽光パネルの取り付けに必要な強度を欠いています。またパネルと架台の重量が屋根に過度なストレスを加えるため、屋根材料が変形する可能性があります。さらに、取り付け作業中に薄い板金が損傷するというリスクもあります。
  • 波板スレート屋根:
    波板スレートは、不規則な形状と比較的脆弱な材質のため、太陽光パネルの取り付けが難しいです。取り付け作業中にスレートが割れたり、パネルの重量によりスレートが損傷したりする可能性があります。

また、2023年現在、法律により太陽光パネルの設置が明確に禁じられている特定の屋根タイプは存在していませんが、設置にあたり以下のような制限を考慮すべき場合があります。

  • 建築基準法、火災予防法などに基づく耐火基準:
    耐火屋根に太陽光パネルを設置する場合、取り付けにより耐火性能が損なわれないようにする必要があります。また、パネル設置後の耐火性能についても適切な調査と評価が必要となります。
  • ビルやマンションの管理規約:
    ビルやマンションでは、建物の外観を変更する行為や、共有部分への改造が制限されている場合が多いです。そのため、屋根への太陽光パネル設置は管理規約により制限されることがあります。
  • 文化財保護法:
    歴史的建造物や文化的価値が認められた建物には、その外観を変更することが制限されています。そのため、これらの建物の屋根に太陽光パネルを設置することは制限されるか、許可が必要となることがあります。

太陽光パネルの“設置に向いている”屋根

それでは、太陽光パネルの設置に向いている屋根の形状には、どのようなものがあるのかを見ていきます。

  • 金属屋根、折板屋根:
    金属屋根は非常に強固で耐久性があり、太陽光パネルの重量を支える能力があります。また、金属は耐候性があり、その強度と耐久性から長期的な太陽光パネルの設置に適しています。
  • 陸屋根:
    陸屋根は平面であり、太陽光パネルの設置に非常に適しています。

※あくまで「“一般的”には向いている」というニュアンスとなります。地域の気候条件、建物の設計、使用される材料の品質等、具体的な状況によって設置可否や対策が変わる点、ご了承ください。

実際の導入事例

実際の導入事例の一部を、屋根の観点でまとめておりますのでぜひご一読くださいませ。

陸屋根の事例(一部)

MRO Japan株式会社様:2022年3月に那覇空港施設内にてご導入。

株式会社岩崎食品工業様:2020年9月にA工場にご導入。2021年10月に導入したC工場は「折板屋根」。

金属屋根、折板屋根の事例(一部)

株式会社クマクラ様:2023年2月、新設工場「所沢エコ・プラント」にご導入。

さいたま春日部市場株式会社様:2023年3月に追加でご導入。

まとめ

この記事では、法人企業が工場の屋根上に太陽光パネルを設置する際に考慮すべき点や、実際に設置がしやすい屋根の形状などについて解説をしました。太陽光パネルの設置には、屋根の強度や形状が重要な要素となります。

恒電社は、埼玉県をはじめ全国に多数の導入実績があるため、実際に自家消費型太陽光発電の導入を検討されている際は、お気軽にご相談ください。

記事の監修:株式会社ワカマツ技建 若松 健二(一級建築士・一級建築施工管理技士)

記事を書いた人

恒石陣汰
株式会社恒電社

恒石陣汰

前職にて、イスラエル発のWEBマーケティングツール「SimilarWeb」「DynamicYield」のセールス・カスタマーサクセスを担当。その後、日本における再生可能エネルギーの普及と、電力業界に大きな可能性を感じ、2020年に恒電社に入社。現在は、経営企画室長兼マーケティング責任者として従事。YouTubeなどを通じた、電力・エネルギー業界のマクロ的な情報提供をはじめ、導入事例記事では、インタビュアー・記事の執筆も行なっている。

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