【法人向け】ソーラーカーポートとは? | 埼玉県のメーカーの導入事例からわかるメリットと考慮すべき点

すでに屋根目一杯に太陽光パネルを載せている場合や、建屋の構造上の理由により屋根に太陽光パネルを取り付けることが出来ない場合でも、太陽光発電システムを導入することができるため注目が集まっているソーラーカーポート。

電気料金の削減、脱炭素化への対策、従業員満足度と企業イメージの向上など、企業にさまざまなメリットをもたらす一方、ソーラーカーポートの導入にはいくつかのハードルが存在することも事実です。

本稿では、ソーラーカーポートの基本的な概要、メリット、そして導入するにあたり考慮すべきことについて弊社の導入事例を踏まえて解説をします。

ソーラーカーポートとは?

定義と概要

ソーラーカーポートとは、その名通り「太陽光発電設備」と「カーポート」を掛け合わせたシステムです。

まず「カーポート」とは、車を保護するための屋根付き駐車スペースで金属製の柱に屋根を取り付けた車庫を指します。

ではカーポートに太陽光発電設備を掛け合わせた「ソーラーカーポート」とは何か?

「ソーラーカーポート」とは、カーポートの屋根として太陽光パネルを設置したもの、またはカーポートの屋根上に太陽光パネルを設置したものを指します。

  • 電気代の削減や脱炭素を目的に太陽光発電を導入したい
  • しかし、既に屋根に目一杯に太陽光パネルを載せている
  • 建屋の構造上等の理由により屋根に太陽光パネルを取り付けることが出来ない

そういった場合でも、太陽光発電設備を導入検討ができるため、非常に注目が集まっています。

ソーラーカーポートがもたらす企業へのメリット

メリットは大きく3つあります。

  • 1.経済的メリット
  • 2.脱炭素化への対策
  • 3.従業員満足度と企業イメージの向上

それぞれ、解説していきます。

1.経済的メリット

ソーラーカーポートの導入には多くの利点がありますが、代表的な利点として「電気料金の削減」が挙げられます。

昨今のエネルギー価格の高騰、そしてその高騰の原因を鑑みると、今後電力会社の電気料金が安くなる可能性は低いです。これからさらなる値上げが起きる、または高止まりする可能性が高いと考えられます。

企業によっては「電気やガスの高騰はしばらくしたら収まるだろうから今は静観する」という判断をされる企業もあります。しかし、電気やガスなどの経費の高騰は多くの企業にとって「経営」を圧迫するほどの影響を与えているのも事実です。

特に経営が圧迫されている企業の特徴は「高騰する光熱費を価格転嫁することが難しい」または価格転嫁したとしても、電気料金が高騰した分に間に合っていない」業界や企業です。

日本経済新聞「物価高原因の倒産、4月2.3倍 価格転嫁できぬ企業多く」

東京商工リサーチが11日発表した4月の全国企業倒産件数は、前年同月比25%増の610件だった。前年同月を上回るのは13カ月連続。とりわけ物価高を原因とする倒産が49件と、前年同月に比べ2.3倍に増えているのが目立つ。原材料価格の上昇を販売価格に転嫁できない中小企業が減らなければ、倒産件数の高止まりが長期化する可能性がある。

産業別にみると建設業の134件(65%増)や製造業の77件(26%増)、運輸業の24件(9%増)などの増加が目立つ。資材や原材料、光熱費の高騰が響いた。東京商工リサーチが4月に約4400社を対象にした調査によると、「調達コスト増加の影響を受けている」と回答した企業は87%にのぼった。その内「上昇分を価格転嫁できていない」との回答が約4割に達した。

日本経済新聞:物価高原因の倒産、4月2.3倍 価格転嫁できぬ企業多く(2023年5月12日付)

高騰する光熱費を価格転嫁することが難しい、または価格転嫁したとしても、電気料金が高騰した分に間に合っていない業界や企業が、自家消費型太陽光発電設備を導入して電気料金の削減をしたい。

しかし「建屋の構造上等の理由により屋根に太陽光パネルを取り付けることが出来ない」や「すでに屋根上に太陽光パネルが載っている」場合に、安定的な”事業継続”を目的にソーラーカーポートを導入するケースが増えています。

2.脱炭素化への対策

昨今、自社だけでなく、サプライチェーン全体で脱炭素を目指そうという大手企業の動きが国内外で拡大しています。

サプライヤーに対して事業で使用する電力を再エネ100%にすることを求めるなど、大手企業と継続的に取引を続けていくために、遊休地を活用したソーラーカーポートを導入する企業もいます。

3.従業員満足度と企業イメージの向上

すでに導入している企業様から、ソーラーカーポートを設置したことで、従業員に屋外で日陰のある駐車スペースを提供できるため、従業員の仕事への満足度が向上しモチベーションが高まった可能性があるという声を聞きました。

持続可能な取り組みに積極的に取り組む企業は、環境意識の高い従業員を惹きつけ、優秀な人材を確保することができるため、就職市場において差別化要因となることもあります。

ソーラーカーポートを導入するにあたり考慮すべきこと

ソーラーカーポートは「特殊建築物」に該当する

あらゆるメリットがあることから注目を集めているソーラーカーポートですが、導入するにはいくつかの越えるべきハードルが存在します。

まずソーラーカーポートは屋根上設置型太陽光発電設備と違い、太陽光パネルの下に駐車場用途があるため、「特殊建築物」に該当します。その為、ソーラーカーポートの導入は「建築基準法」や「消防法などの関係法規を遵守」することが前提となります。

導入”後”のあらゆる問題を防ぐためには、ソーラーカーポートの導入”前”のタイミングで「提案をする業者が建築基準法や消防法などの関係法規について認識しているか?」「実際に導入実績があるのか?」を確認した上で、信頼できる業者に依頼することが重要となります。

そもそも「建築物」とは何か?建築基準法第2条では下記のように定義されています。

一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。

二 特殊建築物 学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。

三 建築設備 建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針をいう。

引用元:e-Gov法令検索

※ちなみに、ここでいう「特殊」は下記のような特性を持ち、特段の規制が必要となる建築物のことを指します。

  • 不特定多数の人の用途に供する建築物
  • 火災発生のおそれ又は火災荷重が大きい建築物

この定義からするとカーポート(自動車車庫)自体が「建築物」かつ「特殊建築物」として認識されます。カーポートはガソリンを使用する車も保管するため、燃える可能性があるとみなされ、特殊建築物となります。よってカーポートを設置する際は、建築基準法および関連法規、告示等に準拠しなければいけません。

ソーラーカーポートを導入する際に気をつけるべき3つのポイント

具体的には、下記3つの基準に準拠する必要があります。

  • 1.構造安全性
  • 2.建ぺい率と容積率
  • 3.地目

1.構造安全性

ソーラーカーポートを設置する場合、構造安全性は非常に重要となります。建築基準に基づいた設計に加え、地域の気象条件に応じた対策が必要です。

例えば、積雪地域では屋根への積雪による荷重に対する耐久性が必要ですし、風の強い地域では基準風速を考慮した構造が必要です。詳細については、自治体ホームページなどから建築基準や地域の気象条件についてご確認ください。

また、設置予定地の地盤状況にも配慮する必要があります。特に、地盤が弱い場合や地震の多い地域では、地盤調査や地質調査を行い適切な対策を講じる必要があります。

恒電社本社がある、埼玉県北足立郡伊奈町の場合
恒電社本社がある、埼玉県北足立郡伊奈町の場合

2.建ぺい率と容積率

ソーラーカーポートは、特殊建築物に該当するため、「建ぺい率」や「容積率」に準拠する必要があります。

建ぺい率とは、建築面積が敷地面積に占める割合を示す指標であり、容積率とは延床面積が敷地面積に占める割合を示す指標です。

法律や都市計画によって定められているため、建築予定地の自治体ホームページもしくは自治体担当者に直接確認することをおすすめします。

建蔽率と容積率の説明
引用:LIFULL HOME’S
さいたま市の白地地域の容積率・建蔽率などについて
さいたま市の白地地域の容積率・建ぺい率

3.地目

予定地の地目によっては、土地利用制限や建築基準法の規制がある場合があります。

例えば、農地や公園、保護地域などの地目には、ソーラーカーポートの設置に対して制限がある可能性があるので予定地の地目について、事前に確認することが重要です。

ソーラーカーポート導入事例 | 埼玉県北足立郡 株式会社昭和技研工業 – ジョイントメーカー

1966年創業のジョイントトップメーカー株式会社昭和技研工業様は、2011年に最初の太陽光発電システムを導入。その後、2022年に自社の駐車場に自家消費型太陽光発電パネル付きカーポートを追加で導入しました。

以下は、同社代表である岩井様に伺った内容の抜粋しました。

なぜ、ソーラーカーポートを導入しましたか?

岩井氏:2つあります。

1つは、カーボンニュートラル。そして2つ目が、人材採用です。

1つ目のカーボンニュートラルは2020年、当時の菅総理が「2030年までに2013年比で温室効果ガスを46%の削減を目指す」と宣言したことがキッカケです。

正直この宣言を聞いて、色々と思うことがありました。ただ、結果として「何かやらなければ」との気持ちに至りました。

なぜなら、弊社のお客様はカーボンニュートラル達成に向けて非常に困っているからです。
先ほど話しましたように弊社のお客様である製鉄・プラスチック関係の企業は温室効果ガスの大口排出業者です。

そのため、いかにして温室効果ガスを出さないようにするか。我々サプライヤー側も一緒に何かしなければいけません。

その中で、まず始められるのが「太陽光パネルを増やすこと」でした。

ただ屋根の面積には限度があるため、どのように導入しようか悩んでいました。ここで、もう一つの背景である”人材採用”がマッチしました。

私は常日頃「どうしたら優秀でやる気のある人に入社してもらえるか?」を考えています。その解決策の一つとして”出勤のしやすさ”がありました。

弊社は最寄駅から遠く、ほとんどの従業員が車で出勤しています。

実は工業団地で駐車をすると、車が汚れることが多々あります。塗料が飛ぶ、鳥のフンが落ちて車が汚れるなど、時折従業員からクレームが入ります。

「工業団地なので当然だ」と、以前は伝えていました。

とはいえ、車が汚れるのは誰しも嫌です。特に若者にとって車は高い買い物なので、汚れないよう大切にしている方もいます。そのため、カーポートの設置は以前から想定にありました。

ここで、2つの要素が合致。「カーポートの上に太陽光パネルを載せればいい!」と。

お客様が温室効果ガスの大口排出業者が多く、なんとかしなければいけない。そして、優秀でやる気のある人を採用するためにはカーポートがいる。この2つが繋がりました。

導入事例の詳細はこちら

【導入事例】埼玉のメーカーがソーラーカーポートを設置した理由は”脱炭素”と”人材採用”の合致

まとめ | ソーラーカーポートの今後の動向と革新性

技術的な進歩と重要性の高まり

ソーラーカーポートは「建築物」に該当するため、建築基準法や消防法などの関連法規を遵守することが必要ですが、それらを準拠し、ソーラーカーポートを導入することで、電気料金の削減、脱炭素化への対策、従業員満足度と企業イメージの向上など、企業にさまざまなメリットをもたらします。

電気自動車(EV)の普及に伴い、便利で利用しやすい充電インフラへの需要が高まっている中、ソーラーカーポートにはEVの充電用ケーブルとコンセントが設置されるスペースも用意することができるため、従業員や顧客の電気自動車を充電できるステーションも用意できる可能性もあります。

企業としてより環境に優しく、より持続可能な事業運営を実現する可能性を高めることができるソーラーカーポートについてご興味がございましたらお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

恒石陣汰
株式会社恒電社

恒石陣汰

前職にて、イスラエル発のWEBマーケティングツール「SimilarWeb」「DynamicYield」のセールス・カスタマーサクセスを担当。その後、日本における再生可能エネルギーの普及と、電力業界に大きな可能性を感じ、2020年に恒電社に入社。現在は、経営企画室長兼マーケティング責任者として従事。YouTubeなどを通じた、電力・エネルギー業界のマクロ的な情報提供をはじめ、導入事例記事では、インタビュアー・記事の執筆も行なっている。

自家消費型太陽光発電設備のことなら
お気軽にご相談ください。

お電話でのお問い合わせ

048-728-4283