売電型太陽光発電と自家消費型太陽光発電の違いとは?
※住宅用の「余剰売電型」は、自家消費後に余った電力だけを売るハイブリッド方式です。本稿では説明を簡潔にするため、全量売電と完全自家消費型を主軸に比較しています。
A. 太陽光発電設備によって発電した電気を「売る」か「使うか」の違いです。
発電した電気を電力会社に販売し、売電収入を得るのが「売電型」。発電した電気を家庭や工場の設備で直接使い、電力会社から買う電力量を減らすのが「自家消費型」太陽光発電です。
監修

売電型太陽光発電と自家消費型太陽光発電の違い
———売電と自家消費は、そもそも何がどう違うのでしょうか?
売電型(全量売電)は、発電した電気を”すべて”電力会社へ売る仕組みです。
「発電量×FIT(固定価格買取制度)の単価」が発電事業者にとっての収入になります。
一方、自家消費型(完全自家消費)は、発電した電気をすべて自社(自宅)で使います。
「購入時の電気料金単価 × 自家消費量」の計算式によって、どのくらい電気を買わなくて済んだのかを計算できます。
※住宅用に多い「余剰売電型」は“自家消費+余りだけ売電”というハイブリッド方式で、本稿では比較を分かりやすくするために 全量売電と完全自家消費 を主軸に説明します。
———売電の収入を決める、FITの単価はどう決まって、なぜ年々下がっているのですか?
FITでの買取単価は「システム導入費用(kW 単価)÷ 回収年数」をベースに毎年、経済産業大臣が設定します。設備価格が下がれば「必要な回収単価」も下がる ── つまり“太陽光設備の導入費用が安くなったから” FIT単価が下がっているのです。
2025年度の例では、50 kW超の全量売電案件で 8.9 円/kWh、10–50 kW帯で 10 円/kWh が目安です。
———直近で、自家消費型が主流になってきたのはなぜでしょう?
作った電気を売るより、自分たちで使った方が経済的だからです。主な要因は二つあります。
- 電気料金が上昇したため、自家消費した電気料金削減効果の方が多くなった(2024年の高圧平均は 約 19.5 円/kWh で、FITとの差が10円超)。
- また、自家消費型太陽光発電によって作られた電気は、CO₂削減効果を自社「*スコープ2」として直接計上できる(ESG評価が取りやすい)。
*スコープ2:他者から供給された電気・熱の使用に伴う間接排出。

———数字で比べると、どのくらい差があるのでしょうか?
100 kWh発電した場合のシンプル比較です。
- 全量売電型:8.9 円/kWh × 100 kWh = 890 円
- 自家消費型(高圧):19.5 円/kWh × 100 kWh = 1,950 円
差額は1,060 円。年間発電量が10万 kWhなら 約106万円 の違いになります。
———経済面以外に、自家消費型が評価される理由はありますか?
自家消費は発電と使用(需要)が同一地点で完結するため送電ロスが少なく、逆潮流もほとんど発生しないので、系統の電圧変動も抑えられます(完全に無くなるわけではありません)。
さらに化石燃料発電を置き換える(発電しない)効果が、直接自宅や工場のCO₂削減に反映されるので、環境経営や脱炭素の取り組みとして分かりやすい成果を示せる点が高く評価されています。
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