【法人向け】電気料金高騰と製造コスト増加|電気料金が「製造業」の競争力にもたらす影響を考察

円安・ウクライナ情勢などの影響により電気料金が高騰していることから、特に「製造業」においてその対策手段となる自家消費型太陽光発電のニーズが高まっています。

工場は膨大な電力を必要とするので、年間の電気料金は数十億円から数百億円にも上り、製鉄などの製造業では製造原価の1割が電気代に充てられるとも言われています。

特に東京電力管内では、電気料金の高騰が少なくとも10年以上続くとの予測もあり、企業が中長期的な対策を練る必要性が高まっています。

この記事では、製造業の企業が直面している電気料金の高騰問題とその影響について、品質、コスト、納期の観点から掘り下げたのち、これらの問題が企業の「競争力」に及ぼす影響についても事例をもとに考察します。

※「そもそも電気料金の内訳がどうなっているのか?なぜ電気料金が高騰しているのか?」という疑問をお持ちの方は下記の動画をご覧いただけますと幸いです。本稿の内容が、より理解しやすくなります。

製造業の「QCD」

製造業にとって重要な「QCD」とは?

製造業において、企業の競争力を維持し、向上させるために、QCD(Quality、Cost、Delivery)の3つが極めて重要と言われています。QCDとは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字を並べたもので、これらは製造業における業績を左右する重要な要素です。

多くの製造業と携わる、キーエンス社の記事でも下記のように述べられています。

「QCD」は製造業において、欠かすことのできない重要な要素です。製造業では、より良い製品を、満足できる価格で、希望する納期までに届ける努力・実行が求められます。QCDの3要素はどれも重要ですが、すべてを同じように向上させることは非常に困難です。それぞれ相互に関係しているので、1つを向上させると、別の要素が悪化することも少なくありません。製造業では、QCDは相互に関係して成り立っています。

引用:業務改善に役立つ「QCD」とは?優先順位やバランスのとり方を解説(キーエンス)

QCDは相互に関係して成り立っているため、「QCDのバランスを取ること」そして「QCDの中で優先順位をつけること」が製造業の企業が競争力を高める上で重要です。

以下に、品質・コスト・納期の優先順位がどのように連動し影響を及ぼすのかについての例を記載します。

「品質(Quality)」中心のアプローチ

優れた「品質」は製品が市場で選ばれるための重要な要素です。しかし、品質の追求がコストの増加を招くこともあります。高品質の製品を作るためには、より高度な設備や検査プロセスが必要となるので、その結果として製造コストが上昇する場合があります。さらに、製造プロセスが増えることで、生産時間が増加するため、納期において問題が発生する可能性もあります。

「コスト(Cost)」主導のアプローチ

利益を最大化するためには、「製造コスト」を削減していく必要があります。しかし、過度なコスト削減は、設備のメンテナンス頻度の低下や、品質基準が低下をもたらすリスクがあるため、結果として納期が遅延したり、品質の観点から信用毀損を招く可能性があります。

「納期(Delivery)」重視のアプローチ

「納期」を厳守することは、顧客満足度の獲得・維持のために重要です。しかし、納期を過度に短縮することは、製造プロセスでのミスや検査の不十分さによる品質保証問題を引き起こす可能性もあります。また、納期を短縮するために、必要な設備の強化や追加人員の確保が必要となるため、追加のコストも発生します。

上記の例からも、QCDの3つの要素は、それぞれが相互に関連しており、一つを改善すると良くも悪くも他の要素にも影響を及ぼすという性質があります。

したがって、これらの要素をバランス良く管理し、最適化することが、製造業における競争力を維持・向上させるための鍵となります。

電気料金の高騰による「コスト(Cost)」の増加

製造業において、重要な「コスト(Cost)」の一部を占める要素が「電気料金」です。

日本経済新聞「物価高原因の倒産、4月2.3倍 価格転嫁できぬ企業多く」

東京商工リサーチが11日発表した4月の全国企業倒産件数は、前年同月比25%増の610件だった。前年同月を上回るのは13カ月連続。とりわけ物価高を原因とする倒産が49件と、前年同月に比べ2.3倍に増えているのが目立つ。原材料価格の上昇を販売価格に転嫁できない中小企業が減らなければ、倒産件数の高止まりが長期化する可能性がある。

産業別にみると建設業の134件(65%増)や製造業の77件(26%増)、運輸業の24件(9%増)などの増加が目立つ。資材や原材料、光熱費の高騰が響いた。東京商工リサーチが4月に約4400社を対象にした調査によると、「調達コスト増加の影響を受けている」と回答した企業は87%にのぼった。その内「上昇分を価格転嫁できていない」との回答が約4割に達した。

日本経済新聞:物価高原因の倒産、4月2.3倍 価格転嫁できぬ企業多く(2023年5月12日付)

製造業は、製品を生産するために大量の電力を必要とします。

ご存知の通り、日本の電気料金は年々上がり続けており、今後少なくとも10年間は東京電力管内の電気料金が安くなる可能性は低く、さらなる値上げが起きる可能性が高いと「電力危機 私たちはいつまで高い電気代を払い続けるのか?|宇佐美 典也 (著)」でも言及されています。

電気料金の高騰は製造業にとって大きなコスト負担となり、QCDのバランスに悪影響を及ぼす可能性があります。

製造コストが増加してしまうと、企業の「利益率が下がってしまう可能性」があります。また、仮に製造コストが増加した分を販売価格に転嫁できたとしても「販売価格が値上がりしたことで、商材の価格競争力が落ちてしまい、売上・利益が減少してしまう可能性」もあります。いずれにせよ製造コストを増加させないための対策は必要となります。

「九州」で世界最大の半導体製造メーカーが新工場建設

電気料金の高騰が製造業の経営を圧迫する中、特に注目されているのが、世界最大の半導体受託製造企業である台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県菊陽町に新工場を建設したことです。

TSMCが熊本県に進出を決めた理由の1つとして、九州エリアの電気料金が比較的安価であることが挙げられています。九州エリアは電気料金が低いことで知られており、TSMCの進出によって、九州が新たな工場建設の中心地となる可能性も浮上しています。

工場は膨大な電力を必要としますので、年間の電気料金は数十億円から数百億円にも上り、製鉄などの製造業では製造原価の1割が電気代に充てられると言われています。

そのため、企業が新たな工場を建設する際に「電気料金(コスト)の水準が低いこと」が非常に重要な要素となっており、中でも九州エリアの電気料金が安いことは、製造業の企業にとって競争力の点からも大きな魅力となっているのです。

参照:工場立地と電気料金、なぜ九州に台湾半導体大手TSMCは新工場を建てるのか?

電気料金の高騰

では「そもそもなぜ各電力会社の電気料金が上がっているのか?」について簡単に解説します。

まず電気料金が高騰している理由を知る上で、日本の電源構成における火力発電への依存度について知る必要があります。

下記のグラフの通り、日本の電源構成の約71%は火力発電に頼っており、燃料のほとんどを海外からの輸入に頼っています。

燃料価格は輸入先の経済情勢の変化などによって変動しますので、燃料費を加味せずに電気料金を一定額で固定したままでは、燃料価格が高騰したときに発電事業者が大きな損失を受けてしまいます。

そういったリスクから発電事業者(電力会社)を保護するために、1996年に「燃料費調整制度」が設けられ、海外から輸入する燃料費の価格が「燃料費調整額(単価)」として消費者の電気料金に反映されるようになりました。

燃料費調整制度とは、火力発電に用いる燃料(原油・液化天然ガス・石炭)の価格変動を、毎月の電気料金に反映させる仕組みのことです。この制度はほとんどの電力会社が導入しています。

引用:電気料金に含まれる「燃料費調整額」とは?仕組みと役割について解説(Looopでんき)

そして現在、以下の理由によって「輸入燃料費の価格」が高騰しているのです。

世界的な燃料需給の逼迫

パリ協定後、脱炭素の国際的潮流により、今後経済的にメリットのないであろう化石燃料に対する上流投資が減少しました。また、新型コロナウイルスによるロックダウン解除によって経済が活発化して世界的な燃料需要が加熱したことからも、燃料の需要に対して供給が逼迫している状況が発生しています。

西側諸国によるロシア産天然資源の輸入量減少

また、供給不足に拍車をかけているのがロシア軍によるウクライナ軍事侵攻です。軍事侵攻に伴い西側諸国は対露制裁としてロシア産天然資源の輸入を自粛をおこないました。燃料大国であるロシアによる西側諸国への天然ガス供給量が減少したことで、世界的な石炭・LNGの争奪戦が起き、結果的に日本の輸入石油・LNG価格が高騰しました。

円安による輸入燃料単価の上昇

円安によって輸入燃料単価が上昇していることも燃料費の高騰に拍車をかけています。

以上、日本の電源構成における火力発電の割合が高いこと、その燃料のほとんどを輸入に頼っていること、さらには輸入燃料単価が世界情勢や円安の影響を受けて高騰していることが、日本の電気料金が高騰している大きな要因です。

上記の理由からも、九州電力のように、他の大手電力と比べても原子力発電・再エネの発電比率が高い電力会社は、燃料費高騰の影響を受けにくい構造となっていることがわかります。

※より詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
【時事】電気料金が高騰|一方、九州電力が電気料金の値上げを回避、その理由とは?

電気料金と製造業のQCDの関連性

繰り返しになりますが、電気料金は製造業における「コスト(Cost)」に直接的な影響を及ぼします。

それでは電気料金が高騰することによって、QCDのそれぞれにどのような影響を与えるのか見てみましょう。

  • 「品質(Quality)」:
    電力は、製造業が製造プロセス全体にわたって品質を維持するために重要な要素です。電力供給が不安定だったり、電気料金が高騰して節電を余儀なくされた場合、製品の品質に影響を及ぶ可能性があります。
  • 「コスト(Cost)」:
    電気料金が高騰すると、製造コストが増加するため、企業として「製品の価格を上げる」、または「価格を維持したまま、利益率を下げる」かの選択を迫られます。大前提、こういったトレードオフの選択は、企業の競争力を維持するためには避けたい選択と言えます。
  • 「納期(Delivery)」:
    電力は、製造をスムーズに進め、製品を時間通りに納品するために必要です。電力供給が不安定だったり、電気料金が高騰して節電を余儀なくされた場合、製造プロセスが遅延し、納期を守ることが難しくなる可能性があります。

以上からも、l電気料金(コスト)を下げることは、製造業のQCDを最適化する上で非常に重要となることがわかります。

そして、実際に競合企業と比較して自社の電気料金が低い場合は、新しい製品開発、製造設備のアップグレード、人材の育成など、他の重要な要素に投資ができる可能性を高めます。これらは、企業の成長と競争力をさらに強化することにつながります。

ですが、明日から電気料金をすぐに下げること簡単ではありません。

企業は電気料金の現状を理解し、早め早めに対応策を実施していくことが重要となります。

まとめ

この記事では、電気料金の高騰が製造業の企業の競争力にどのような影響を及ぼすのかを、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の観点から考察しました。

専門家の中では(特に東京電力管内において)電気料金の高騰・高止まりは10年以上続くとも予測されておりますので、企業としても中長期的な対策を講じる必要があると言えます。

恒電社は、埼玉県を中心に電気料金対策となる自家消費型太陽光発電設備のご導入を一気通貫で対応しております。実際に自家消費型太陽光発電の導入を検討されている際は、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

恒石陣汰
株式会社恒電社

恒石陣汰

前職にて、イスラエル発のWEBマーケティングツール「SimilarWeb」「DynamicYield」のセールス・カスタマーサクセスを担当。その後、日本における再生可能エネルギーの普及と、電力業界に大きな可能性を感じ、2020年に恒電社に入社。現在は、経営企画室長兼マーケティング責任者として従事。YouTubeなどを通じた、電力・エネルギー業界のマクロ的な情報提供をはじめ、導入事例記事では、インタビュアー・記事の執筆も行なっている。

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